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2020.01.08

オーダーの種類③-イージーオーダー編-

【オーダースーツ TailorFukuoka Blog】

 

こんにちは

テーラーフクオカ銀座店の豊島です。

 

先日のブログ

(オーダーの種類①-フルオーダー編-)

(オーダーの種類②-パターンオーダー編-)に

続きまして本日はイージーオーダーについて書いていきます。

 

オーダーの種類 イージーオーダーとは

 

まずイージーオーダーとは、というところから

書きすすめていきます。

 

まだオーダーのスーツが

手縫い(一部ミシンは使われてはいたものの…)で縫うのが

一般的だった時代(1950~60年代)では

既製も含めスーツは今より遥かに高価な代物でした。

 

フルオーダー 縫製風景

 

 

先日のフルオーダーについてのブログのなかでも

触れたお話と重複するところですが

一から型紙をおこし手で縫い上げる、というのは

人件費がかかるのももちろんのこと

生地も今よりはるかに高価でした。

手間もかかりましたし

生産効率も今のように高いわけではないためです。

 

オーダーメイドのスーツにかかる

原価の最たるものが

「縫製代」と「生地代」ですから

当時、“背広の誂えは月給数ヶ月分程度かかる”

というのが相場だったそうです。

 

その中でより手が届きやすい価格で

オーダーメイドのスーツを作ろうという

機運が高まり、やがて生まれたのが

イージーオーダーと呼ばれる方式です。

 

一言で言えば

仕立て屋がやっていたことを

“生産ラインに載せて出来るようにした”

ということです。

 

イージーオーダー縫製風景

↑昭和後期の縫製工場風景(当時の自社工場)

 

当時の日本は製造業としては

世界でもトップクラスの生産性を

誇っていた頃ですから

従来の工房で職人が仕立てるような方式からすれば

工場で縫製をすることによって

非常に合理的にスーツが

仕立てられるようになったはずです。

 

手裁断 縫製工場風景

 

当初はほとんどコンピュータの領域は

なかったと聞いています。

次第にCADシステムの進化などにより

自動裁断などオートメーションの領域が増え

今のような価格や納期でスーツが

オーダーメイド出来る時代となりました。

 

自動裁断機

↑工場で実際に稼働している自動裁断機

 

繰り返しになりますが

元々、フルオーダーを工場に置き換えようというのが

イージーオーダーのはじまりです。

よって工場生産でマシンメイドであるとはいえ

イージーオーダーはかなり融通の効く

オーダー方式といえます。

 

例えば体型補正なども

従来のフルオーダーで用いられていたものは

イージーオーダー創成期にはすでに

ほぼすべて再現できるようになっていたそうです。

例えば反身・屈身はもちろんのこと

肩の傾斜(怒り肩・なで肩)や袖付け方法や

前身頃と後ろ身頃の微調整など

事細かな調整が行えました。

 

その他にも釦数を増やしたり

必要に応じてポケットを増やしたり形状を変えたり

口幅などを調整したりなど

昔から誂え服にはつきものだった

オリジナリティある注文にも対応できるのも

イージーオーダーの特徴といえるでしょう。

 

Tailor Fukuokaはこのイージーオーダー方式を

採用し50年ほど経ちます。

手前がゆえに上記では良い事ばかり

書いてしまいましたが

メリットもあればデメリットもあるのです。

今回はデメリットについても触れていこうと思います。

 

テーラーフクオカ提携ファクトリー工業用ミシン

 

まずは納期です。

イージーオーダーの場合

上記のような細かな注文に対応するため

イレギュラー対応などもかなり多く

縫製の工程数もおのずと増えるため

その分日数を要します。

概ね4週間程度で仕上がる場合が多いですが

繁忙期には5~6週間というのもザラにある話です。

 

もう一つが自由度です。

「え?メリットじゃないの?」と言われる

箇所かもしれませんが

あえてデメリットとさせていただきました。

自由度が高いがために

どんなカタチにも“作れてしまいます”

語弊のある言い方をすると

美しくないオーダースーツを

作ることも出来てしまうのです。

フィッターにより仕上がり(フィット感)に差が

かなり出やすかったり、デザインなどの味付けも変わります。

また注文や要望を叶えすぎてしまっても

(バランスという意味では)良いスーツに

ならない場合があるのです。

 

 

そして価格です。

生産効率が高いとはいえず

きめ細やかな対応をしていた工場ほど

平成不況の波にのまれかなり数を減らしました。

少し前までは工場内でイチから型紙を引いてくれるような

工場も国内にもたくさんあったのですが

今はほとんどそこまで対応できる工場は

無くなってしまいました。

 

そして残った工場も

イージーオーダーを続けるには

生産効率に見合う縫製賃に

見直す必要があるため10年ほど前からすると

倍とまではいきませんがかなり縫製賃は上がりました。

(人件費の高騰もありますし)

こうした背景や生産性により

パターンオーダーなどより

価格が高額になりやすいのです。

 

こうしたものも考慮する必要もあり

イージーオーダーにはこういった難しさもあるのです。

 

縫製工場 イージーオーダーファクトリー イメージ

 

話がやや変わりますが

うちのオーダーは国内縫製だから良い、

などということは

なるべく申し上げないようにしております。

(そんな時代でもないと思うので^^;)

 

ですがこのイージーオーダーの場合は

指示内容が非常に細かく情報量も多いため

同じ日本語で縫製者へ伝達ができる

というのはありがたいなぁと

日々オーダー業務にあたっていて強く感じるところです。

イージーオーダーに関しては

国内で完結出来るというのは

イージーオーダーのポテンシャルを

発揮できる強みだと思っています。

 

 

日本でもトップクラスの技術を持つ

イージーオーダー工場などは

ほぼフルオーダーのような工程数を誇り

とてつもなく素晴らしいクオリティーの

オーダーメイドスーツが縫製されています。

現在のイージーオーダーというのは

パターンオーダーに比べると

ややマイノリティな方式かもしれませんが

後世にもこのオーダー方式は

残っていってほしいと切に願っています。

 

イージーオーダーイメージ

 

我々としてもイージーオーダーを

より広く皆様にご体感いただけるように

盛り上げていくことができれば嬉しいです。

 

長文にお付き合いありがとうございました。

 

豊島

Staff投稿者豊島 [Toyoshima]

東京都出身
服飾系大学を卒業後入社し
現在はTailor Fukuokaにて企画会議や撮影などに参画。
メガネとヒゲ(たまにボウタイ)が特徴で
こだわり強めの一児の父。多趣味である。
新宿店店長